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音源とMIDI情報
音源とは
音源とは,コンピュータなどの電子装置が目的の音(さまざまな楽器の音や人間の声)を人工的に発生させるために用いる装置のことで,シンセサイザなどの電子楽器や,コンピュータや携帯電話などの音を扱える情報機器に搭載されている.
音源は,時代とともに発達し,次のような進化を遂げてきた.
- アナログシンセサイザ: 1965年に発明
- デジタルFM音源: 1980年代から1990年の主流.
- PCM音源: 手軽に利用でき,現在の主流
- 物理モデル音源: 高性能だが操作が複雑
また,これら音の発生方式の種類による分類とは別に,後述のMIDIに対応した音源のことを特に
- MIDI音源
と呼ぶことがある.
アナログシンセサイザ
1965年に最初のシンセサイザが発明された.発振器(電気的にsin波のような電圧を発生する装置)の出力を電圧によって振幅を調整したり,発振周波数を調整したりして,音の三要素に対応させて制御できるように工夫されたもの.その出力をスピーカにつなぐことで人工的に音を鳴らすことができた.複数の発振器を使って和音を合成する程度.
デジタルFM音源
1980年代にデジタル式のシンセサイザとして普及した技術.Windows普及以前のパソコンや,少し前の携帯電話の着メロ機能などでも使用されていた.上記のアナログシンセサイザと同様に複数のsin波を合成する方式であるが,コンピュータを用いることで,手動では不可能な複雑な組合せや微妙な調整ををすることで,かなりいろいろな楽器に近い音色を合成することも可能とする.周波数をどう変更するかが出力する合成音を決定する情報となることから,FM(frequency modulation: 周波数変調)方式と呼ばれる.
PCM音源
サンプリング音源,ウエーブテーブル音源とも呼ばれる.現在のパソコン,携帯電話の着うた機能などに使用されている.PCM(Pulse Code Modulation)方式による音源.この方式は,楽器や声などの音をそのままデジタイズして保存し(サンプリングしておき),それを必要に応じて音の高さや大きさを変更し合成することで,任意の音を人工的に発生させる方式である.FM音源では発生不可能な音も(sin波からでは合成できない音も),その音をあらかじめサンプリングしておけば使用することができる.理論上どんな音も合成できることになる.PCMと呼ばれるのは,情報の伝達にパルスの符号を用いるためである.
物理モデル音源
VA(virtual acoustic)音源,DSP(digital signal processor)音源とも呼ばれる.DSPとは,デジタル信号を処理するための専用LSIのことを呼ぶ.この音源はこうしたDSPなどを利用して,楽器の発音構造や共鳴構造をシミュレートすることで音を生成する.目的の音を合成するための設定項目が多いなど操作が複雑すぎるため,あまり普及していない.PCM音源と異なり,実際に存在しない楽器の音もシミュレートできる.
(参考)「変調(modulation)」とは
電波などの波形に何か情報を載せて伝達するために,波形に対して加えられる変換のことをいう.次のものがある.
- AM(amplitude modulation): 振幅変調
- FM(frequency modulation): 周波数変調
- PCM(pulse code modulation): パルス符号変調
前者ふたつはアナログ変調と呼ばれる.それぞれ,基準波(搬送波:carier)波を用意して,その振幅を(微妙に)変更したり,周波数に変更したりする.例えば電波のような高周波に,音声のような低周波をのせて送信するラジオで用いられている.音声波形の情報を,電波の基準波(放送局の周波数)を変調させることで送信する.また,基準波そのものを「0」,変調された波を「1」と考えて,デジタル信号の伝送にも用いることができる.
最後のPCMは少し性格が異なり,前回説明した波形のデジタイズ方式そのものをいう.波形をサンプリングレートごとのパルスとして標本化して情報を取得することからこの名が付けられた.
演奏データ(譜面情報)のデジタル化
MIDI(Musical Instrument Digital Interface)とは
MIDIとは,Musical Instrument Digital Interfaceの略称で,楽器の演奏情報の通信プロトコルの国際共通規格である.プロトコルとは,手順を意味し,通信する際のやりとりの手順を定めた ものである.つまり譜面の情報をデータ化して,コンピュータと電子楽器などを接続して通信する際の取り決めのことである.1982年に主要な楽器メーカにより最初の規格が取り決められ,その後の拡張は日本の社団法人音楽電子事業協会とアメリカのMMA(MIDI Manufactures Association)の協議によって行われている.1999年にはJIS規格としても制定された.
MIDI音源は,このMIDI形式のデータを受け取り,それに従った音を発生させて「演奏」を行う音源のことを指す.音の発生方法は前述のFM音源であったりPCM音源であったりする.また,MIDI端子のつけられた電子楽器としては例えばMIDIキーボードなどがあり,人間が演奏することも,コンピュータとMIDI端子で接続されMIDIデータを受け取って自動演奏することもできる.
これらMIDI対応楽器やMIDI音源の真価は,複数接続されて同時演奏を行うことで発揮される.MIDIではひとつの楽器に相当するパートのことをチャネル(channel)と呼ぶが,ひとつの音 源で複数チャネルを持つ音源や複数の電子楽器を接続することでオーケストラ演奏まで可能となる.
DTM(Desktop Music)
このようにコンピュータに接続させて,コンピュータ上で作曲から演奏のしかたまで決定し,電子楽器などに自動演奏させることなどをDTM(Desktop Music)と呼ぶ.またDTMで使用するMIDI用のソフトウェアのことをシーケンサ(sequencer)ソフトと呼ぶ.シーケンサソフトでは,コンピュータ画面上で楽器別に譜面を入力させ,それを演奏データとするものが多い.