教科書 "データベース設計の基礎" 

大木 幹雄,日本理工出版会 1998年 (197頁,\2,500)

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最近のパソコンの普及によって,データベースは企業情報システムのみならず,個人的な情報管理のツールとして身近な存在になりつつある.一昔前では専門の技術者が行なっていたデータベースの設計や開発が個人で簡単に行なえるようになっている.しかしながら,書店をのぞいてみると,MS ACCESSやORACLEといったデータベースパッケージの利用方法やプログラミング方法に関するハウツーものの書籍は多数見受けられるが,データベースの設計方法を基礎的なところから解説したテキストは少ないように感じる.

本著は,大学学部を対象にした「データベースの基礎,および実際」のために作成したテキストであるが,企業のデータベース技術者の入門書として利用されることを意識している.

最近の情報システムは,データベースの知識なしでは開発することが困難になっており,短期間にデータベースの基礎的な知識を習得する必要性に迫られるば場合が多い.このようなとき,理論的過ぎず,かといって実用的のみを追求したものでもないテキストが必要になる.

内容的には,他のデータベースの理論的なテキストと異なり,ファイル編成法に比較的ページを割いている.これは,データベースを上手に使いこなす上で,データベースの物理的な格納イメージをもっていると,やたらと索引を作るようなことや,効率を無視したスキーマ設計等がある程度防げるためである.同時に,関係データモデルの物理的な構成を理解しやすくと考えるためである.

次いで関係データモデル,特にERモデルに多くのページを割いている.これは,もちろん,データベース設計の中核部分であり,データベースのスキーマ設計(ACCESSでいえばテーブル設計)を正しく行なうには,不可欠な知識だからである.したがって,本書は,MSACCESSやORACLE等の解説書を読む前に,読むべき入門書であるということができる. データベース設計は,情報システムの設計においても大きな比重を占め,かつソフトウェア工学とも深く関係する.ソフトウェア工学を学ぶ者にとっても,できるだけ本書の関係モデルのスキーマ設計は精読されることを薦める.


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